「ファウスト」の感想
ファウスト
ファウスト

森鴎外

分量:約698
書き出し:薦むる詞《ことば》昔我が濁れる目に夙《はや》く浮びしことあるよろめける姿どもよ。再び我前に近づき来たるよ。いでや、こたびはしも汝達《なんたち》を捉へんことを試みんか。我心|猶《なお》そのかみの夢を懐かしみすと覚ゆや。汝達我に薄《せま》る。さらば好し。靄《もや》と霧との中より5我身のめぐりに浮び出でて、さながらに立ち振舞へかし。汝達の列《つら》のめぐりに漂へる、奇《く》しき息に、我胸は若やかに揺らる...
更新日: 2016/01/14
3e9c4b240bacさんの感想

新潮文庫の「ファウスト」は読んだけれど、森鴎外の訳は初読でした。やっぱ久しぶりに読むと面白いな~。なんか、讃美歌だかキリストのお祈りの文句?を、お経的な感じで翻訳してるところは、なるほどなーと感心した。たしかにこれは、明治人の読み物としてはカルチャーギャップがありすぎるよね。 前編は、メフィストの魔術で若返ったファウストが、町娘のグレートヒェンと恋愛します。これで幸せに終わればよかったのに、グレートヒェンの兄を殺し、母を殺させ、しまいにはグレートヒェンを、はらませてしまう。はたから聞くと、ダメンズっつーか「なんだこの男?!人間のクズやん」ですが、真面目で高尚すぎる精神をもつファウストの苦悩たるや。そこが見ものなんですな。ブロッケン山での、魔女やら魑魅魍魎、入り乱れてのお祭り騒ぎはてだ単に楽しかったです。 後半は、なんかもう非哲学人の私にはちんぷんかんぷんでしたが(何年か前に初読したときも同じこと思ったw成長してない)思想の応酬とか、宗教的な議論が中心です。 神話の神々が自分の性格に基づいた持論を展開してます。あんまり神話詳しくないから、このへんは「へーそーなんだー」と読み流した。 で、ファウストの魂は(なんやかんやあって)天の同情を買って、結局天使に救われるのですが(すっごいご都合主義だよね?!)、いわく、努力するものは救われる云々…。 メフィストが天使をみて、「めっちゃ嫌いだけどめっちゃかわいい。キスしたい」とか言ってるのには少し萌えた(笑)