一本の釣りざお
いっぽんのつりざお
初出:「読売新聞」1921(大正10)年4月30日、5月2日~4日分量:約9分
書き出し:一あるさびしい海岸《かいがん》に、二人《ふたり》の漁師《りょうし》が住《す》んでいました。二人《ふたり》とも貧《まず》しい生活《せいかつ》をしていましたから、町《まち》や都《みやこ》に住《す》んでいる人々《ひとびと》のように、美《うつく》しい着物《きもの》をきたり、うまいものをたくさん食《た》べたり、また、ぜいたくな暮《く》らしなどをすることは、思《おも》いもよらないことでありました。二人《ふたり...