一本のかきの木
いっぽんのかきのき
初出:「赤い鳥」1921(大正10)年9月分量:約10分
書き出し:山《やま》にすんでいるからすがありましたが、そのからすは、もうだいぶん年《とし》をとってしまいました。若《わか》い時分《じぶん》には、やはり、いま、ほかの若《わか》いからすのように、元気《げんき》よく高《たか》い嶺《みね》の頂《いただき》を飛《と》んで、目《め》の下《した》に、谷《たに》や松林《まつばやし》や、また村《むら》などをながめて、あるときは、もっと山奥《やまおく》へ、あるときは、荒波《あ...