「空中征服」の感想
空中征服
くうちゅうせいふく

賀川豊彦

分量:約271
書き出し:——作者自画——一市長就任演説「偉大なる大大阪の市民諸君、私はこのたびこの大大阪の市長として席を汚すことになりました。私はそれを光栄に思い、また不名誉にも思うております」賀川豊彦が、大阪市長になったという号外が大阪百五十万の市民に配られたのは、三日前のことであった。それはまったく市民の予想外のことであり、資本家も、労働者も、官憲も、誰もそれを知らなかった。ただ一人賀川豊彦のみが知っていた。賀川豊彦...
更新日: 2019/10/01
ハルチロさんの感想

本作品の題名だけを見て、本作品の内容を推し量ることは、至難かもしれない。しかし、ひと度内容を目にすれば、この題名がしっくりくる。 本作品は、小説である。理想的社会主義を著した小説と見られる。または、空想的理想主義小説、啓蒙的空想小説とも見られる。だが、内容は堅苦しいものではない。“大人向け”イソップ寓話というか、“大正時代版物語風”聖書というか、読み進めやすい小説である。 また、本作品の題材である大阪の煤煙問題ーー大気汚染ーーが、早、大正時代にこれ程問題視されていたとは、勉強不足であった。1970年代にクローズアップされた公害問題と同じようである。繰り返してはならない歴史である。