陰獣トリステサ
いんじゅうトリステサ
初出:「ホープ」1946(昭和21)年10月〜1948(昭和23)年9月分量:約316分
書き出し:殺人者の手記「被告!被告は自己のために、何か最後の陳述をしたいという意志はないか?」と裁判長は紙とペンをくれて、私に最後の陳述の機会を与えてくれた。その機会を利用して、今私は獄窓にペンを走らせているわけであるが、これが法廷に対する私の告白であるか、犯した罪に対する懺悔《ざんげ》であるか、あるいは私の死後にこれを読んでくれるであろう一般社会に対する私の挑戦であるかは、見る人々の判断に任せるとしよう。...