悪魔の弟子
あくまのでし
初出:「新青年」1929(昭和4)年7月分量:約64分
書き出し:一××地方裁判所検事土田八郎殿。一未決囚徒たる私、即ち島浦英三は、其の旧友にして嘗《かつ》ては兄弟より親しかりし土田検事殿に、此の手紙を送ります。検事殿、あなたは私を無論思い出して居《お》らるる事でしょうね。仮令《たとい》他の検事によって取り調べられ、次で予審判事の手に移されてしまった私であっても、あの、世間を騒がした美人殺しの犯人として伝えられ、新聞紙上に其の名を謳《うた》われたに違いない以上、...