子供は悲しみを知らず
こどもはかなしみをしらず
初出:「社会 創刊号」1946(昭和21)年9月分量:約12分
書き出し:広《ひろ》い庭《にわ》には、かきが赤《あか》くみのっていました。かきねの破《やぶ》れを直《なお》して、主人《しゅじん》は、いま縁側《えんがわ》へ腰《こし》を下《お》ろし、つかれを休《やす》めていたのです。彼《かれ》はこのあたりの地主《じぬし》でした。裏門《うらもん》から、寺《てら》のおしょうさんが、にこにこしながら、入《はい》ってくるのを見《み》ると、ちょっと迷惑《めいわく》そうな顔色《かおいろ》...