谷間のしじゅうから
たにまのしじゅうから
初出:「赤い鳥 鈴木三重吉追悼号」1936(昭和11)年10月分量:約11分
書き出し:春《はる》のころ、一|度《ど》この谷間《たにま》を訪《おとず》れたことのあるしじゅうからは、やがて涼風《すずかぜ》のたとうとする今日《きょう》、谷川《たにがわ》の岸《きし》にあった同《おな》じ石《いし》の上《うえ》に降《お》りて、なつかしそうに、あたりの景色《けしき》をながめていたのであります。小鳥《ことり》たちにとって、この二、三か月《げつ》の間《あいだ》は、かなり長《なが》い間《あいだ》のこと...