僕たちが、東日本大震災を経験して、大きく変わったことといえば、明日何が起こるか分からない不安と、いまある生命のはかなさだろうと思います。連絡がつかず、その生死も分からないまま家族がばらばらになってしまった痛ましい例を実際に見てきただけに、この小説が描いている家族離散と、あらゆる手立てを尽くしても連絡がつかず、相手が生きているのか、死んでいるのか分からないまま、とにかく生きていくために仕方なく新たな伴侶を得るということは、十分にあり得ることだなと納得できるようになりました。夫婦のいずれもが相手の生死も分からず、諦めて新たな相手と新しい生活を安定させ掛けたとき、前の亭主と不意に遭遇したその後、もし、前夫が金目当てに脅しにかかってくるようなシチュエーションを想定できるような人がいたら、それはあの大震災の惨状と人間のつながりを毀損破壊した荒廃を見ていなかった人に違いありません。
佐藤がプロポーズしたところでストーリーは想像できた しかし、佐藤の妻子の行方が解らず仕舞いという事が妙な味を 引き出しているという印象的な作品だった。
生き延びること、男と女のめぐりあい ー 勇気付けられる。読んで良かった。