「にぎり飯」の感想
にぎり飯
にぎりめし

永井荷風

分量:約18
書き出し:深川古石場町の警防団員であつた荒物屋の佐藤は三月九日夜半の空襲に、やつとのこと火の中を葛西橋近くまで逃げ延び、頭巾の間から真赤になつた眼をしばだゝきながらも、放水路堤防の草の色と水の流を見て、初《はじめ》て生命拾《いのちびろ》ひをしたことを確めた。然しどこをどう逃げ迷つて来たのか、さつぱり見当がつかない。逃げ迷つて行く道すがら人なだれの中に、子供をおぶつた女房の姿を見失ひ、声をかぎりに呼びつゞけた...
更新日: 2022/02/04
ace0443be3bcさんの感想

僕たちが、東日本大震災を経験して、大きく変わったことといえば、明日何が起こるか分からない不安と、いまある生命のはかなさだろうと思います。連絡がつかず、その生死も分からないまま家族がばらばらになってしまった痛ましい例を実際に見てきただけに、この小説が描いている家族離散と、あらゆる手立てを尽くしても連絡がつかず、相手が生きているのか、死んでいるのか分からないまま、とにかく生きていくために仕方なく新たな伴侶を得るということは、十分にあり得ることだなと納得できるようになりました。夫婦のいずれもが相手の生死も分からず、諦めて新たな相手と新しい生活を安定させ掛けたとき、前の亭主と不意に遭遇したその後、もし、前夫が金目当てに脅しにかかってくるようなシチュエーションを想定できるような人がいたら、それはあの大震災の惨状と人間のつながりを毀損破壊した荒廃を見ていなかった人に違いありません。

更新日: 2019/01/10
cc64fa1d8df1さんの感想

佐藤がプロポーズしたところでストーリーは想像できた しかし、佐藤の妻子の行方が解らず仕舞いという事が妙な味を 引き出しているという印象的な作品だった。

更新日: 2018/01/17
ec538f32331eさんの感想

生き延びること、男と女のめぐりあい ー 勇気付けられる。読んで良かった。