読みやすくとても面白かったです 言葉というものは生きていることの不安から芽生えたもの。喜びの言葉にも工夫が施され、人間は喜びにも不安を感じている という亀の言葉になるほど真理だと思いました
面白かった。浦島と亀のやりとりが最高!!
恥ずかしながら太宰治はほとんど読んだことがなかったんですが、「野武士のグルメ」という漫画に(ネットで3話ほど読めます)で主人公が友人に薦められ、読みながら吹き出すシーンがあって、気になって読んでみました。 いやぁ、確かに面白い。「太宰?暗いんじゃないか?」「学校教育の弊害ってやつだな」というのは「野武士~」の台詞ですが、まさしく。 これが教科書に載ってたら太宰治のイメージもかなり変わったものになるでしょう。 旧仮名遣いも何書いてるかギリギリ理解できるし、教科書に載せて学ばせたら、謎解き感覚で読み解けて楽しいと思うんですが。 内容も、よく知られたお伽話を実にシニカルに、しかしリアルに描かれています。 竜宮城の「もてなし」なんて、「なるほどなー、確かにこれが一番の贅沢かもね」と妙に納得してしまいました。 さすが、いいとこのボンボンなだけはある(笑) この作品は作者自身のモノローグが挿入されるので、太宰治のものの考え方がストレートに分かったりとか、いや、それすら読者をケムに巻いた発言ではないか?とか、推測するのも楽しいです。 「舌切り雀」では「登場人物全員ろくなもんじゃないな」と思いましたが、雀の一人(?)が「全員悪いよ、くだらない、放っておきな」みたいな台詞を口にしてびっくりしながらも関心しました。 フィクションを読んでいる時、物語の流れ上しょうがないとは理解しつつも、作者の都合が垣間見えてなって鼻につくことがたまにありますが、登場人物の一人に読者の気持ちを代弁させることにより、その鼻につく感じ、読者の不満を解消させる。これはテクニックと呼んでも過言ではないのでは? フィクション作家には太宰治のファンが結構いますが、太宰治の作品には、フィクションの技法が散りばめられていて、勉強になるから、というのもあるかもしれません。
昔話も、太宰が書くと完全に太宰ワールドになる。矛盾を掬いながら進む物語は一見の価値あり。
誰もが馴染みのある昔話を、太宰ならではの皮肉とユーモアを織り混ぜながら描き直した作品。特にカチカチ山には大変笑わされると同時に、何とも切ないものを感ぜざるを得ない。 「惚れたが悪いか」なんと言おうと「惚れたが悪い」のである、兎にとっては。