砂子屋
まなごや
初出:「文筆 五周年記念随筆特輯号」1940(昭和15)年10月30日 分量:約2分
書き出し:砂子屋太宰治書房を展開せられて、もう五周年記念日を迎へられる由、おめでたう存じます。書房主山崎剛平氏は、私でさへ、ひそかに舌を卷いて驚いたほどの、ずぶの夢想家でありました。夢想家が、この世で成功したといふためしは、古今東西にわたつて、未だ一つも無かつたと言つてよい。けれども山崎氏は、不思議にも、いま、成功して居られる樣子であります。山崎氏の父祖の遺徳の、おかげと思ふより他は無い。ちなみに、書房の名...