牧野信一
子供の芝居が 開幕する寸前に 叔母さんに連れられた 小さい子が 飛び入りで 舞台に乗りたいというので いやいや 出してやると 途中で 馬鹿面をかぶったまま 泣き出してしまったけど 見物の人逹は 囃(はや)し立て それが かえって 受けてしまう。 面は笑い 顔は泣いてると言う 話である。 心象風景に かすかに残っているような 気もしてくるのである。