楽器の生命
がっきのせいめい
初出:「随筆」1924(大正13)年4月分量:約15分
書き出し:音楽《おんがく》というものは、いったい悲《かな》しい感《かん》じを人々《ひとびと》の心《こころ》に与《あた》えるものです。いい楽器《がっき》になればなるほど、その細《こま》かな波動《はどう》が、いっそう鋭《するど》く魂《たましい》に食《く》い入《い》るように、ますます悲《かな》しい感《かん》じをそそるのであります。そして、奏《かな》でる人《ひと》が、名手《めいしゅ》になればなるほど、堪《た》えがた...