おそらく互いに名前も知らない、小さな流しの商売人達が宿にする海辺の木賃宿。主人公の旅の青年は、まるで迷い込んだように、そこにねぐらを得、アルバイトのような手伝いの口を得て、彼らと交流する。 格好にこだわらないと言えば良いが、情や縁という他人との心の交流も薄い銭占屋の生き様。かつての生活を取り戻そうと苦労を耐えるうち、流れ稼業が板に付いた万年筆売りの夫婦。彼らと交わった主人公が、哀愁を胸に旅を終わりにすることを決めるという結末は、実は誰でも他人の人生に影響を与えることが出来る、捨てたものでは無いという話のように思ったな。