酒屋のワン公
さかやのワンこう
初出:「童話文学」1928(昭和3)年7月分量:約12分
書き出し:酒屋《さかや》へきた小僧《こぞう》は、どこかの孤児院《こじいん》からきたのだということでした。それを見《み》ても、彼《かれ》には、頼《たよ》るものがなかったのです。ものをいうのにも、人《ひと》の顔《かお》をじっと見《み》ました。その目《め》つきはやさしそうに見《み》えたけれど、なんとなく、不安《ふあん》な影《かげ》が宿《やど》っていました。「もしや、自分《じぶん》のいったことが、相手《あいて》の心...