「越後の冬」の感想
越後の冬
えちごのふゆ
初出:「新小説」1910(明治43)年1月号

小川未明

分量:約21
書き出し:小舎《こや》は山の上にあった。幾年か雨風に打たれたので、壁板《したみ》には穴が明き、窓は壊れて、赤い壁の地膚が露《あら》われて、家根《やね》は灰色に板が朽ちて処々《ところどころ》に莚《むしろ》を掩《かぶ》せて、その上に石が載せられてあった。この山の上は風が強い。雪解《ゆきげ》の頃になれば南の風が当るし、冬は沖から吹く風が時々小舎を持って行くように揺《ゆす》るのであった。だから家の周囲《まわり》には...
更新日: 2020/11/02
19双之川喜41さんの感想

 14才の太吉は 母を迎えに 町に出て 事故に遭ってしまう。 (北越雪譜)や 八雲の影響の 色濃い文章かとも 思われる。 囲炉裏の廻りに 集っても 言い知れぬ哀れさに みつるようにも感じた。

更新日: 2017/05/24
ゲロンパさんの感想

越後出身作家が越後をどう描くのか、ただそれだけが気になって何の気なしに読み始めた。読了して後悔した。これは正座する気持ちで読むべき話であった。太吉がひとり、母の影を求めてあてどなく彷徨う様がとても寂しく、まさか母はもう…と思ったところで文字通り雲行きが怪しくなる。太吉の命は雪の寒さに吸い取られ、列車の光に押し潰された。「おっ母!」と泣く声がどんなにか悲痛で必死なものだったか。その場面だけが心に刻み込まれて忘れることが出来ない。親の知らないうちに親の知らない場所で死ぬ子供というのはこんな風に命を落としていくのかと考え始めたらただただ哀しくて大人気なく泣き叫んでしまいたい気持ちになる。他の作品もぜひ読んでみたいと思う。