14才の太吉は 母を迎えに 町に出て 事故に遭ってしまう。 (北越雪譜)や 八雲の影響の 色濃い文章かとも 思われる。 囲炉裏の廻りに 集っても 言い知れぬ哀れさに みつるようにも感じた。
越後出身作家が越後をどう描くのか、ただそれだけが気になって何の気なしに読み始めた。読了して後悔した。これは正座する気持ちで読むべき話であった。太吉がひとり、母の影を求めてあてどなく彷徨う様がとても寂しく、まさか母はもう…と思ったところで文字通り雲行きが怪しくなる。太吉の命は雪の寒さに吸い取られ、列車の光に押し潰された。「おっ母!」と泣く声がどんなにか悲痛で必死なものだったか。その場面だけが心に刻み込まれて忘れることが出来ない。親の知らないうちに親の知らない場所で死ぬ子供というのはこんな風に命を落としていくのかと考え始めたらただただ哀しくて大人気なく泣き叫んでしまいたい気持ちになる。他の作品もぜひ読んでみたいと思う。