面影
おもかげ
ハーン先生の一周忌に
ハーンせんせいのいっしゅうきに初出:「家庭新聞」1905(明治38)年9月分量:約12分
書き出し:一独り、道を歩きながら、考えるともなく寂しい景色が目の前に浮んで来て胸に痛みを覚えるのが常である。秋の夕暮の杜《もり》の景色や、冬枯《ふゆがれ》野辺の景色や、なんでも沈鬱《ちんうつ》な景色が幻のように見えるかと思うと遽《たちま》ち消えてしまう。消えてしまった後は、いつも惘《ぼっ》として考えるのである。なんでこんな景色が目に見えるのであろう。誰のことを自分は思っているのか?気に留めて考えれば空漠《く...