黄色い晩
きいろいばん
初出:「早稲田文學」1909(明治42)年4月号分量:約17分
書き出し:垣根の楓《かえで》が芽を萌《ふ》く頃だ。彼方《あちら》の往来で——杉林の下の薄暗い中で子供|等《ら》が隠れ事をしている。きゃっきゃっという声が重い頭に響く。北から西にかけて空は一面に黄色く——真黒な雲がその上に掩《おお》い被《かぶ》さって、黄色な空をだんだんに押しつけて、下に沈ませているようだ。刻々に黄色な空が減じて終《しまい》には一直線となって、はっきりと地平線から此方《こちら》を覗き込んでいる...