不思議な鳥
ふしぎなとり
初出:「趣味」1910(明治43)年2月号分量:約22分
書き出し:一車屋夫婦のものは淋しい、火の消えたような町に住んでいる。町は半ば朽ちて灰色であった。町には古い火の見|櫓《やぐら》が立っていた。櫓の尖《さき》には鉄葉《ブリキ》製の旗があった。その旗は常に東南の方向に靡《なび》いていた。北西の風が絶えず吹くからである。また湯屋があった、黒い烟《けむり》が、町の薄緑色の夕空に上っている……車屋の家は、軒の傾いた小さな店で蝋燭屋《ろうそくや》の隣りにあったが、日が暮...