迷い路
まよいみち
初出:「読売新聞」1906(明治39)年8月12日号分量:約12分
書き出し:二郎は昨夜《ゆうべ》見た夢が余り不思議なもんで、これを兄の太郎に話そうかと思っていましたが、まだいい折《おり》がありません。昼過ぎに母親は前の圃《はたけ》で妹《いもと》を相手にして話をしていたから、裏庭へ出て兄を探《たず》ねると、大きな合歓《ねむ》の木の下で、日蔭の涼しい処で黙って考え込んでいるのであります。二郎は心配そうに傍に寄り添うて、「兄さん、何を其様《そんな》に考えているんです、何処《どこ...