「後の日の童子」の感想
後の日の童子
のちのひのどうじ
初出:「女性」1923(大正12)年2月号

室生犀星

分量:約41
書き出し:一夕方になると、一人の童子《どうじ》が門の前の、表札の剥げ落ちた文字を読み上げていた。植込みを隔てて、そのくろぐろした小さい影のある姿が、まだ光を出さぬ電燈の下に、裾《すそ》すぼがりの悄然《しょうぜん》とした陰影を曳いていた。童子は、いつも紅い塗《ぬり》のある笛を手に携《たずさ》えていた。しかしそれを曾《かつ》て吹いたことすらなかった。植込みのつたの絡んだ古い格子戸の前へ出て、この家のあるじである...
更新日: 2017/12/31
ec538f32331eさんの感想

犀星は大正11年に中央公論に「童子」を発表しているので、一年後に女性に発表された本作品はその続編かと思われる。幻想的で、厳粛、優美。親達の心底深い悲しみが伝わってくる。そして躊躇しているような童子がひたすら不憫で愛らしい。