黒田如水
くろだじょすい
初出:「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月分量:約457分
書き出し:蜂の巣一太鼓櫓《たいこやぐら》の棟木《むなぎ》の陰へ、すいすいと吸いこまれるように、蜂《はち》がかくれてゆく、またぶーんと飛び出してゆくのもある。ここの太鼓もずいぶん久しい年代を経《へ》ているらしい。鋲《びょう》の一粒一粒が赤く錆《さ》びているのでもわかる。四方の太柱《ふとばしら》でさえ風化《ふうか》して、老人の筋骨のように、あらあらと木目のすじが露出《ろしゅつ》している。要するに、この御着《ごち...