私の生まれた家
わたしのうまれたいえ
初出:「朗」1961(昭和36)年4月1日分量:約4分
書き出し:私の郷里は、片山津《かたやまづ》という、加賀《かが》の温泉地である。今は加賀市になって、国際観光ホテルもあり、近くに立派なゴルフ場もある。まるで昔日の面影はない。しかし私が生まれた頃は、北陸の片田舎の小さい部落であった。村ともいえないところで、本当の地名は、作見《さくみ》村|字《あざ》片山津小字|砂走《すなわせ》である。村の下の字、そのまた下の小字であるから、部落の大きさの見当はつくであろう。五十...