興行物天使
こうぎょうものてんし
――或る後日譚として――
――あるごじつだんとして――初出:「朝鮮と建築 第十集第八号」朝鮮建築会、1931(昭和6)年8月分量:約2分
書き出し:整形外科はヲンナの目を引き裂いてとてつもなく老ひぼれた曲芸象の目にしてしまつたのである。ヲンナは飽きる程笑つても果又笑はなくても笑ふのである。ヲンナの目は北極に邂逅した。北極は初冬である。ヲンナの目には白夜が現はれた。ヲンナの目は膃肭臍の背なかの様に氷の上に滑り落ちてしまつたのである。世界の寒流を生む風がヲンナの目に吹いた。ヲンナの目は荒れたけれどもヲンナの目は恐ろしい氷山に包まれてゐて波濤を起す...