「建国の事情と万世一系の思想」の感想
建国の事情と万世一系の思想
けんこくのじじょうとばんせいいっけいのしそう
初出:「世界 四」1946(昭和21)年4月

津田左右吉

分量:約66
書き出し:今、世間で要求せられていることは、これまでの歴史がまちがっているから、それを改めて真の歴史を書かねばならぬ、というのであるが、こういう場合、歴史がまちがっているということには二つの意義があるらしい。一つは、これまで歴史的事実を記述したものと考えられていた古書が実はそうでない、ということであって、例えば『古事記』や『日本紀』は上代の歴史的事実を記述したものではない、というのがそれである。これは史料と...
更新日: 2017/04/20
b9ef941530ccさんの感想

津田左右吉の建国の事情と万世一系の思想では、皇室は古来、ヤマトの全国統一事業の過程では、戦争といった方法で地方豪族達をまとめていったのではなく、平和的に豪族達との協議の中で全国統一をなした。皇室は直接民衆と対峙することはなく、豪族との連携であった。天皇家自ら政治をする親政はあまりに行われて来なかった。曽我氏や物部氏、藤原摂関家、鎌倉幕府、室町幕府、豊臣政権、江戸幕府などが事実上の政権運営をしてきた。言わば、二重政権が日本の歴史の常態であり、天皇家は時代の変遷とともに、適応してきた。明治維新以後、西欧型の立憲君主政治をとり、天皇家は民衆と直接対峙する中で、神格化された。皇室はこれまで平和的に日本の精神的宗教的権威として、人々や権力者に敬われ親しまれてきた。民主主義と天皇家とは相容れないものではなく、天皇家に対する尊敬と信頼によって、また天皇家の民衆に対する慈悲の心の深化が民主主義そのものになのである。