芸術と国民性
げいじゅつとこくみんせい
初出:「みづゑ 一二六」1915(大正4)年8月分量:約6分
書き出し:芸術史家、または芸術の批評家が或る個人の作品を観てそこにその作家の属している国民全体の趣味なりまたは物の見かたなり現わし方なりの或る傾向が見えるというのは尤《もっとも》な話である。しかし芸術家が製作をするに当って「おれは日本人だから日本人の趣味を現わすのだ」というようなことを意識してかかるものがあるならば、それは飛んでもない見当ちがいの話である。芸術家が製作するに臨んでは渾身ただ燃ゆるが如き製作欲...