日本上代史の研究に関する二、三の傾向について
にほんじょうだいしのけんきゅうにかんするに、さんのけいこうについて
初出:「思想 一一〇」1931(昭和6)年7月分量:約30分
書き出し:近ごろ、いろいろな意味で世間の注意が国史の上に向けられ、上代史についても種々の方面において種々の考察が行われている。種々の立場からの種々の見解が提出せられることは、全体として学問の進歩を助けるものであるのみならず、ともすれば凝滞の弊に陥り易い学界を刺戟し、あるいはそれに新問題を与え、新しい観点からの研究を誘発する意味においても、喜ぶべきである。そうしてまた実際、それらの考察には傾聴すべきものが少な...