感謝
かんしゃ
――救援会の人々へ――
――きゅうえんかいのひとびとへ――分量:約1分
書き出し:ふところにはびた一文もないここへ廻されたことも誰れも知らないだらう便りさえ奪れている身だ六日間便器とカビと煤《すす》とのあらゆる臭いにむされながらくさいめしを無理につめ込んで煤だらけの真っ黒い天井とにらめっこして生きた七日目ふと、独房までもつき抜ける声を聞いた「ここにSと云う男がきている筈ですがこの本と金をやって下さい……」思わず俺は格子にすがったHの声だおお、五十里をはるばると差入れにきた嬉しい...