拡大されゆく国道前線
かくだいされゆくこくどうぜんせん
初出:「文学案内」1935(昭和10)年11月号分量:約2分
書き出し:(1)視野一面連る山脈の彼方に朝やけの赤い太陽——ペダルを力一杯地下足袋《はだしたび》で踏んづけて工事場へ走る俺達爽涼たる朝霧の中に曲りくねった山峡の白い路杉と雑木と山の背の彼方に見えてはかくれかくれては現われる相棒の姿俺は呼びかける——おうい待てよう——ほーい山萩の垂れ下った曲路の向う側にあいつの自転車は消えてベルの音とこだまだけが深い谷間に残る——早う来んと歩が切れるぞう(2)石工は玄翁《げん...