兄ちゃん
にいちゃん
初出:「プロレタリア詩」1931(昭和6)年12月号分量:約1分
書き出し:吹きっさらしの田圃《たんぼ》にはもう、村の誰《たあれ》も出ていないだのに、私の家では麦蒔きがすまない取り入れ半ばに兄ちゃんが召集されてあとに残った女手二つ私とおっ母とであくせくと麦蒔き毎日、朝早くから晩おそくまでかたい刈株をうちかえし、うねをつくりせっせと蒔きつけを急ぐ私達——かよわい女手で、夕方、ぐったり疲れて家に帰れば地主の奴が、がみがみ年貢を取りたてにやってくるおお兄ちゃんが満州へ引ったてら...