「中村仲蔵」の感想
中村仲蔵
なかむらなかぞう

山中貞雄

分量:約59
書き出し:中村仲蔵(未映画化)——————————原作並脚色山中貞雄=(F・I)道鏝不付の半次が徳利持って一散に走って居る。(移動)(ヘッド・タイトルを道の移動にダブらしたらどうかと思います)(速やかにF・O)=(F・I)松平帯刀の邸一人の旗本、斬られてダダーとのけ反った。入れ替りに一人がサッと斬り込む。斬り込んで来た奴を横薙ぎにして左刄高く振り上げた此村大吉、大見得切った形。殺陣開始——遂に大吉、帯刀を斬...
更新日: 2025/05/22
65c8aadc88adさんの感想

雙之川喜1941  役作りの 苦労話しを 表に 出して その後の 話しを おまけにつけた らしい。サイレント映画を 見た ことが 無いけれど セリフが 字幕で 示される ものなのか 相当 昔の ことなので 判然と しない。

更新日: 2022/05/08
cdd6f53e9284さんの感想

落語「中村仲蔵」をベースにした山中貞雄のサイレント映画のためのシナリオで、未映画化作品だそうだ。 先代の林家正蔵が、よく演じていたネタだった。 落語の方のストーリーは、仲蔵が、忠臣蔵五段目定九郎の役を振り当てられ、大した役ではないことに腐りながらも、役作りの工夫を凝らして真摯に取り組んだ結果、観衆の評判を呼び、名優への途を開いたとされている伝説的な逸話がベースになっている。 仲蔵の逸話を元にした似たような落語に「淀五郎」があるが、浅野内匠頭の切腹の作法の演じ方に苦慮した仲蔵が、微妙な演じ分けを先輩俳優から教えてもらって、見事難局を切り抜ける話で、リアルさからいえば、この「淀五郎」に軍配が上がるだろうか。 しかし、山中貞雄のシナリオの方は、評判を取った仲蔵の「その後」から、始まっている。 このシナリオにおける劇中の人の出入りのさばき方などは、既に僕たちが親しんできた「河内山宗俊」や「人情紙風船」と、とてもよく似た運びなのだが、マンネリを感じさせないのは、一貫して流れる権力への反逆、その悲劇性と虚無感に貫かれているからだろう。 そして、さらにもうひとつ加えるなら、うら若き女性たちの恋に身を捧げる一途さと、死ぬことで終わるしかない、あまりにも卑弱な儚さだろうか。 「人情紙風船」の町娘の原節子や霧立のぼるの可憐さをみれば、それは分かる。 このシナリオで、上記の2人に相当するのが、仲蔵に恋い焦がれるお光であり、大吉に裏切られる雪枝なのだが、いずれも物語の半ばであっけなく命を落としている。 このシナリオを通して読んでいて気に掛かったセリフがあった。 これだ。 大吉「女という奴、命懸けで恋することを知らぬ」 このセリフを逆に読めば、俺が死ぬほど愛したのに、俺の思いを女は結局気づかなかったということになる。 これが雪枝に対する仕打ちというか、意趣返しのような裏切りに繋がっているらしいのだが、結局のところ、それらしい「過去」を説明した箇所は、残念ながら見つけることはできなかった。