鳩つかひ
はとつかい
初出:「富士 九巻八号」1936(昭和11)年7月号分量:約37分
書き出し:悪魔の使者「くそッ!また鳩だ。これで四度目か」立松捜査課長は、苦り切った表情で受話機を切ると赤星刑事を顧みて、吐き出すようにそう言った。平和の使者と言われる鳩が、悪魔の使となって、高価な宝石を持つ富豪の家庭を頻々と脅かしているのである。この訴えを聞いてから早くも一カ月余りになるが、未だに犯人の目星さえつかず、あせりにあせっている矢先、またしても今の訴えだ。「今度は誰です?」赤星刑事は、眼を輝かしな...