魂の喘ぎ
たましいのあえぎ
初出:「宝石 二巻一〇号」1947(昭和22)年11月、12月合併号分量:約25分
書き出し:1××新聞社の編集局長A氏は旧侯爵藤原公正から招待状を貰った。彼は次長を顧みて、「君、これを読んで見給え、特種階級も大分生活が苦しいと見えて、藤原侯が家宝売り立てをやるそうだ」と白い角封筒を渡した。次長は中味を引き出すと低い声で、「拝啓、菊花の候益々御多祥奉賀候、就ては来る十月十五日拙宅において、いささか祖先珍重いたせし物、当家としては家宝とも称すべき品々、展観に供え、その節御希望の品も候わば御入...