「所有」の感想
所有
しょゆう
初出:「旭川新聞」1923(大正12)年6月16日

今野大力

分量:約1
書き出し:あらゆる所有の王国に呪いあれ*万民平等なる母体の胎児たりし時卿等に所有の観念の兆せしや否や我古代より現代に至る社会の変遷による人々の苦悩は個人があやまれる自由の曲訳により所有の観念のあやまれる故なりと断ずるなり*自由とは何ぞや*あらゆる個人の所有を許さざる万民平等の時神人《しんじん》等が私慾の一点も加えられざる処これあるのみ*我ここに按ずるに所有の生みなせる処の社会の空中に燦然たる電波線前面に大玻...
更新日: 2015/10/17
697177b0dcddさんの感想

今の社会主義や共産主義は、既に史的原初の理想から遠く離れて、単なる独裁の追認になってしまっている。 ただ、この詩が訴える、原初の苦悩(厳密には舶来思想につき、翻訳を通して著者が当時の知見で知り得た限りでの、『原初』だろうけど)はひしひしと伝わってくる。 日本が近代化の際に西洋を模倣し、その礎には西洋哲学や宗教(学)があったけれど、根源で、それらさえ、時の権力の所有、資産の所有を如何に正当化するか、批判するかというポジショニングに過ぎないとさえ言える。文化の把握自体に、所有が組み込まれている。 もっと言うと、時代が下り色んな克服がなされたはずの世界、個人主義の世の中における恋愛や婚姻でさえ、所有の概念の延長である。彼・彼女は自分のものだ、というフレーズは、所有をベースにした思考の表れだ。 それが下劣に現れると、奴隷制になったりする。 最近、日本で話題の(?)徴兵制はお国のためという美辞麗句がコーティングしているので、背後の権力欲、所有欲を炙り出すのは難しいが、言外にみんな感じ取るから危機感を感じるのではないかな。 詩の後半の含意はまだ消化できた気がしないけど、なんか現在の電波利権や原発利権を連想した。もちろん、そこにはインフラの所有欲が潜んでいる。