銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
254 茶汲み四人娘
254 ちゃくみよにんむすめ初出:「オール讀物」文藝春秋新社、1951(昭和26)年7月号分量:約38分
書き出し:一「親分、あつしは百まで生きるときめましたよ」八五郎はまた、途方もない話を持ち込んで來るのです。江戸はもう眞夏、祭太鼓の遠音が聞えて、心太《ところてん》にも浴衣にも馴染んだ、六月の初めのある朝のことでした。「きめなくつたつて、お前の人相なら、百二三十迄は生きるよ、——何んだつてまた、そんな慾張つたことを考へたんだ」平次は讀みさしの物の本を、疊の上に屋形に置いて、さてと、煙草盆を引寄せました。からか...