銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
263 死の踊り子
263 しのおどりこ初出:「講談倶樂部」1951(昭和26)年7月号分量:約34分
書き出し:一「八、大層ソワ/\してゐるぢやないか」錢形平次は煙草盆を引寄せて、食後の一服を樂しみ乍ら、柱に凭《もた》れたまゝ、入口の障子を開けて、眞つ暗な路地ばかり眺めてゐる、八五郎に聲を掛けました。「今|撞《う》つた鐘は、戌刻《いつゝ》(八時)でせう」八五郎はでつかい指を、不器用に折り乍ら、相變らず外ばかり氣にして居るのです。「それが何うしたんだ」「五つまでには、來なきやならないんだが」「誰が來るんだ、借...