銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
295 万両息子
295 まんりょうむすこ初出：「オール讀物」文藝春秋新社、1953（昭和28）年1月号分量：約40分
書き出し:一「世の中には變つた野郎があるものですね、親分」ガラツ八の八五郎は、又何やら變つた噂を持つて來た樣子です。「大抵の人間は、自分は世間並より變つた人間だと思つて居るよ」錢形平次は、相變らず、はなつから茶化してかゝります。結構な冬日向、何が無くとも豆ねぢに出がらしの番茶、お靜は目立たぬやう、そつと滑らせてお勝手に引下がると、晝下がりの陽を膝に這はせて、八五郎の話は面白く彈むのです。「深川入船町の鍵屋源...
