銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
046 双生児の呪
046 ふたごののろい初出:「オール讀物」文藝春秋社、1935(昭和10)年12月号分量:約43分
書き出し:一「親分、お願ひがあるんですが——」お品は斯う切り出します。石原の利助の一人娘、二十四五の年増盛りを、『娘御用聞《むすめごようきゝ》』と言はれるのはわけのあることでせう。「お品さんが私に頼み——へエ——それは珍らしいネ、腕づくや金づくぢや話に乘れないが、膝《ひざ》小僧の代りにはなるだらう。一體どんな事が持上がつたんだ」錢形平次は氣輕にこんな事を言ひました。お品の話を、出來るだけ滑《なめ》らかに手繰...