銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
003 大盗懺悔
003 だいとうざんげ初出:「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年6月号分量:約34分
書き出し:一人間|業《わざ》では盜めさうもない物を盜んで、遲くとも三日以内には、元の持主に返すといふ不思議な盜賊が、江戸中を疾風《しつぷう》の如く荒し廻りました。「平次、御奉行|朝倉石見守《あさくらいはみのかみ》樣から嚴《きつ》い御達しだ、——近頃府内を騷がす盜賊、盜んだ品を返せば罪はないやうなものではあるが、あまりと言へばお上の御威光を蔑《ないが》しろにする仕打だ。明日とも言はず、からめ取つて來い——と仰...