銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
149 遺言状
149 ゆいごんじょう初出:「文藝讀物」文藝春秋社、1943(昭和18)年10月号分量:約26分
書き出し:一柳原の土手下、丁度|御郡代《おぐんだい》屋敷前の滅法淋しい處に生首《なまくび》が一つ轉がつて居りました。朝市へ行く八百屋さんが見つけて大騷ぎになり、係り合ひの町役人や、彌次馬まで加はつて搜した揚句《あげく》、間もなく首のない死骸が水際の藪《やぶ》の中から見つかり、それが見知り人があつて、豊島町一丁目で公儀御用の紙問屋|越前屋《ゑちぜんや》の大番頭清六と判つたのは、大分陽が高くなつてからでした。ガ...