銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
004 呪ひの銀簪
004 のろいのぎんかんざし初出:「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年7月号分量:約34分
書き出し:一「永い間斯んな稼業《かげふ》をして居るが、變死人を見るのはつく/″\厭だな」捕物の名人錢形の平次は、口癖《くちぐせ》のやうにかう言つて居りました。血みどろの死體をいぢり廻すのを商賣冥利と考へる爲には、平次の神經は少し繊細に過ぎたのです。それが一番凄慘な死體と逃れやうもなく顏を合せることになつたのですから、全くやりきれません。「ガラツ八、手前は大變なところへ、俺を引張つて來あがつたな」「繩張り違ひ...