夏向きの一夜
なつむきのいちや
初出:「東京労働新聞」1950(昭和25)年8月10日分量:約5分
書き出し:争えないもので、顔までがいつのまにやらそういう顔つきになってしまったのであろう。夜は云うまでもないが、昼間でも、街を歩いていると、ぼくはよくおまわりさんから誰何されたのである。それはしかし、顔つきばかりのことではなく風体からしてそもそもぼく自身の生活を反映しているものなのであって、当時の流行語を借りて云えば、所謂、るんぺんと称されているところのもので、ぼくは路傍で暮らしているような状態にあったから...