めたん子伝
めたんこでん
初出:「文學界 第9巻第10号」文藝春秋、1955(昭和30)年10月号分量:約35分
書き出し:めたん子はしぜん町の片側に寄り切られ、皮紐とか棒切れとかで、肩先や手で小突かれ、惡い日は馬ふんを蹶とばして、ぶつかけられてゐた。めたん子は抵抗する氣が全然失せてゐて、對手をちよつと見返るだけで、その眼には何時も怒りは封じられてゐて、怒ることが出來ないのだ。皮膚は熟柿色で眼はやぶ睨みをしてゐるのが、友達仲間から厭がられ、憎まずにゐられないのである。これは人間に與へられてゐる皮膚の色ではない。めたん子...