燃ゆる頬
もゆるほお
初出:「文藝春秋 第十年第一号」1932(昭和7)年1月号分量:約20分
書き出し:私は十七になつた。そして中學校から高等學校へはひつたばかりの時分であつた。私の兩親は、私が彼等の許であんまり神經質に育つことを恐れて、私をそこの寄宿舍に入れた。さういふ環境の變化は、私の性格にいちじるしい影響を與へずにはおかなかつた。それによつて、私の少年時からの脱皮は、氣味惡いまでに促されつつあつた。寄宿舍は、あたかも蜂の巣のやうに、いくつもの小さい部屋に分れてゐた。そしてその一つ一つの部屋には...