宮沢賢治の詩
みやざわけんじのし
初出:「レツェンゾ」1935(昭和10)年6月号分量:約1分
書き出し:彼は幸福に書き付けました、とにかく印象の生滅するまゝに自分の命が経験したことのその何の部分をだつてこぼしてはならないとばかり。それには概念を出来るだけ遠ざけて、なるべく生の印象、新鮮な現識を、それが頭に浮ぶまゝを、——つまり書いてゐる時その時の命の流れをも、むげに退けてはならないのでした。彼は想起される印象を、刻々新しい概念に、翻訳しつつあつたのです。彼にとつて印象といふものは、或ひは現識といふも...