山浦清麿
やまうらきよまろ
初出:「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月分量:約129分
書き出し:小諸の兄弟一『のぶ。——刀箪笥《かたなだんす》を見てくれい』袴《はかま》の紐《ひも》を締め終って、懐紙、印籠などを身に着けながら、柘植嘉兵衛《つげかへえ》は、次の間へ立つ妻の背《うしろ》へ云った。『——下の抽斗《ひきだし》じゃ。この正月、山浦真雄《やまうらさねお》が鍛《う》ち上げて来た一腰があるじゃろう。二尺六寸ほどな物で、新しい木綿《もめん》に巻き、まだ白鞘《しらさや》の儘で』『ございました。こ...