鍋島甲斐守
なべしまかいのかみ
初出:「オール讀物」文藝春秋、1936(昭和11)年9月号分量:約33分
書き出し:一問う者が、(世の中に何がいちばん多いか)と訊いたところ、答える者が、(それは人間でしょう)と、云った。問う者が又、重ねて、(では、世の中に何がいちばん少いか)すると、答える者が、(それも人間でしょう)と、云ったという話がある。江戸町奉行《えどまちぶぎょう》の鍋島甲斐守《なべしまかいのかみ》は、いつもその話を思い出して、その人間の中でもいちばん多いものは悪人ではなかろうかと思い、白洲《しらす》に出...