御鷹
おたか
初出:「オール讀物」文藝春秋、1936(昭和11)年2月分量:約24分
書き出し:一眼がしぶい、冬日の障子越しに、鵙《もず》の声はもう午《ひる》近く思われる。弁馬《べんま》は、寝床の上に、腹ばいになり、まだ一皮寝不足の膜《まく》を被《かぶ》っている頭脳《あたま》を、頬杖《ほおづえ》に乗せて、生欠伸《なまあくび》をした。顔中のあばたが動く。煙管《きせる》を取って、すぱっと一ぷく燻《くゆ》らしながら、ゆうべ打粉を与えて措いた枕元の腰の刀を見ると、さすがに体が緊《し》まって来た。『—...