夏の終わりにふさわしい。 十代に 似たような心の動きがあったような気にさせてくれる。 読み手を 追憶にいざなう。 とにかく 中程からでも 気軽に読み進むのが 新鮮な出逢いとなる。 片岡義男氏の 太っ腹に感謝します。
甲子園予選の真っ只中だ。町やグラウンドの光景、登場人物、淡々とした無駄の無い語り口に、映画を観ているように場面が浮かぶ。何十年ぶりの片岡義男作品、鬱々とした毎日に、 涼しい風が吹いた気がする。
「which 以下のすべて」という短編は、姉が中学教師でその親友が自分の高校の英語教師という設定で、しかも英語教師は凄い美人だが生徒ウケは決して良くない。理由は冷たい、気取っている、すましている、というような生徒の主観的印象だろうと姉は言う。 近より難い女性は確かに男性から見たら存在する。嫌われたくないのでかえって話しかけないで距離をおく。どうせ俺なんかに興味を示してくれないと思い込むと嫉妬心から逆に悪口を言ってしまう。美人が100%得なわけではないというのが人生の妙である。
はじめの三編は17、18才の少年の話。この年頃の少年には、夏がよく似合う。あと、異性の存在はかかせない。個人的には『which 以下の全て』が好き。あと二編がタイプの全く違う少女の話。でもどちらも、芯のある少女。作者の好みを感じる。
作者が少年時代(1950年代)の心理や、これらを書かれた頃 (1990年代) の十代~二十代の人たちの情景。 作者より 10歳若い世代ですが、 読んでいなかった分野の作品なので、新鮮であると同時に、体験は全然 違うのに とても懐かしさもかんじました。 ここまで 二作品、読み終えたところです。 三作め。会話のテンポが愉しい。 真夏の空、水、海 生き生きしてきます。 読んでる私も 爽やかな恋をしているよう。