銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
070 二本の脇差
070 にほんのわきざし初出:「オール讀物」文藝春秋社、1937(昭和12)年12月号分量:約38分
書き出し:一「親分、大変なものを拾って来ましたぜ」八五郎のガラッ八は、拇指《おやゆび》を蝮《まむし》にして、自分の肩越しに入口の方を指しながら、日本一の突き詰めた顔をするのでした。「何だ、八、小判か、銭か」銭形の平次は置き炬燵《ごたつ》に尻を突込んで黄表紙を拾い読みしていたのです。「そんな物じゃねえ、人間ですよ、親分」ガラッ八の真剣さ。「夜鷹《よたか》なんか拾って来やがると、勘弁しねえよ。薪雑棒《まきざっぽ...